Works

実績紹介

海風の家

概要

建設地 広島県廿日市市
構造 木造住宅 2階建て
床面積 総面積 128.83㎡(38.92坪)、住宅部分 91.49㎡ (27.64坪)
建物性能 耐震等級 2 耐風等級 2 Ua値 0.5(28年基準 0.87以下)
外部仕上げ 屋根、外壁 ガルバリウム鋼板、一部板貼り
内部仕上げ 床 杉フローリング、壁 構造用合板化粧仕上げ+クロス、一部漆喰塗り

 

建築計画において、避けられない様々な条件がある。

この建築はその条件に負け続けた計画である。

建主と出会ったのは2016年3月、宮島を望む傾斜地の土地の購入を検討されていた。

傾斜地の場合、基礎に大きな予算を取られるため、

プランの方向性を確定、行政との協議の上、予算把握をしてから、購入することを提案する。

しかし、方向性が定まらないうちに、不動産会社からのプレッシャーがかかり、

土地の先行購入をせざるを得ない状況になった。

 

その後、本計画地の複雑な事情が、徐々に浮き彫りになる。

この斜面地は本来、道路の法面として造成されており、この住宅地に住む人々は

ここに住宅が建設されることがないという話で、30年前に住宅を建設していた。

そこから、市町村合併の混乱の中、斜面地のみを民間に売却され、

2年前に景観と高さに考慮しない建売住宅が建設され、住民からの不信感を買う結果となった。

その後の計画である。。

まずは道路面から高さを低く設定し、平屋のように計画した。

斜面地に計画するので、影響が出ないわけではないが、

敷地北側隣地の生け垣より低くし、隣家の宅内からの景色を阻害しないように計画をすすめた。

斜面地の最下部には5mの擁壁があり、その下には団地がある。

上の団地と同じく、斜面地に家が建たないと聞いていた、下の団地の住民から、

擁壁の安全性を守るよう、行政に要望された。

当初はこの話が行政担当から聞かされず、摩擦杭で計画していたが、

擁壁に力を加えないように支持杭での計画に変更。

最終的には擁壁が破壊された際にも自立するようにと、

杭と基礎をラーメン構造として、計画するように求められた。

計算書を持ち込む度に、次々と新たな要求を提示され、

必要事項を書類としての明示を求めたが、提示されなかったことにはさすがに不信感が募った。

計画当初800万円ほどで計画していた基礎・杭工事が倍増されたことにより、

幾度となくプランの再考を与儀なくされた。

これには私だけではなく、建主ご夫妻、奥様のご両親に大きな心労を与えることになった。

ただ、諦めるわけには行かなかった。

いい意味でも悪い意味でも、不動産屋のプレッシャーに負けてしまったことにより、

計画の中止は建主の家族を不幸に導くことになる。

実際、計画地の東斜面地では諦めた跡として、太陽光発電パネルが並んでいる。

こうして、住民の要望、行政の指導、予算という様々な条件に負け続けた。

ただし、性能とデザインは諦めなかった。

美容室を営むご主人は住まいと店を別に賃貸しており、その家賃と光熱費がかかっていた。

新しい住まいと店の計画もその範囲内で納めることができれば、生活が成り立つことになる。

また、美容室としての、建築の魅力も必要である。

予算を絞るためでもあったが、開口部は南北にしか存在しない。

魅力的な島並みを楽しむため、大きなバルコニーを南面に設置した。

各居室は必要最低限の広さにして、3人で住むミニマムの住まいとした。

撮影は2018年5月、竣工後半年がたち、建主のセンスが光る住空間となっている。

お嬢さんは1時間かけて、小学校に通っているとのこと。

ここで、ご主人が希望されていたスローライフを楽しむために、

しっかりとローンを返すため、美容室の成功を祈っています。(笑)