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建築家が家を建てるなら 敷地の見かた編

家づくりにおいて、本来は親から譲り受けた土地で建て替えるのが、一番安価ですし、敷地の特徴がわかっているので、家づくりは簡単です。

しかし、私のように次男かつ、生まれ育った街から出てしまった人間にとって、敷地の良し悪しをどう見るかはなかなか難しいです。

そんな敷地の見方について、考えていきます。

周辺環境

一般の方が興味を持ち、不動産屋さんが説明する部分です。
近くにどんな学校があり、スーパーまでは近いのか、
交通機関はどうなのかですね。

時々、この小学校に行かせたいという理由で、土地を探されている方がいらっしゃいますが、個人的には短期的な考えで土地を選ぶのではなく、長期的な視野で土地を探すことをオススメします。
 その家に住み続けるのは子供ではなく、あなた自身で、子育てが終わったあとも、生活が続くことを忘れてはいけません。

ただ、今回は町中のため、条件的には良さそうです。
学校も近く、買い物、交通には不便はありません。
ただし、駐車場はつくれません。
町中であれば、車の必要性はないのかもしれませんね。

災害リスクの把握

近頃は土砂災害の危険区域に関しては、説明される不動産屋さん屋が増えてきているようですが、それ以外にもリスクは存在します。

町中には土砂災害の可能性がある山は少ないですが、広島の都市部には川があります。平時は土手を散歩したり、川でSUPなども楽しめるかもしれません。
しかし、近年の大雨や南海トラフ地震の津波など、この川が猛威をふるう可能性もゼロではありません。

洪水の被害は1mほどのリスクがありそうです。

津波のリスクは2m〜3mとなっています。

こうした情報を出していくと、広島では家が建てれなくなるから、見たくないもしくは、お客様に出さないという会社もありますが、それは大きな間違いです。

もともと、日本は災害が多い国であり、耐震性に関しては、建築基準法で最低性能が定められていますが、こうした水害に関してどう対応するかは定められていない、つまり、建築主や設計者に一任されているのです。
ネットのおかげで、こうした情報はスマホでも見ることができるので、情報をしっかり取得し、住まい方に反映する必要があります。

高さが3mの津波に対応するには、できるだけ基礎を高く、もしくは1階を鉄筋コンクリートにして、メインの住居エリアを2階にすることが対策になると考えられます。木造か鉄筋コンクリートにするかは予算に反映しそうなので、1mの基礎高さで、洪水リスクをヘッジし、津波による1階の被害は保険でヘッジすることが現実的と判断できます。

ちなみに上記マップは地盤の弱さによる地震の強さがどこまで増幅するかを表しています。ブルーのところは、地盤が強く、地震の力を半分にまで低減し、オレンジ色は1.5倍まで増幅させます。広島の都市部はデルタエリアなので、地盤も弱くなります。
また、別の基準で地域地震係数というものがありますが、広島は地震が少ないから、0.9とされていますが、上記の写真からすると馬鹿げた基準です。
地域地震係数に関しては過去にも記事を書いていましので、よろしければ、お読みください。
地域地震係数

建築家が考える抜け

一般の方は窓は多いほうがいいとか、天井はできるだけ高くなど考えられている方が多いですが、建築家はそんな思いで、窓を開けていません。
その窓から何が見えるのか、どんな景色とつながり、それが生活にどんな豊かさを与えてくれるかが重要と考えています。
大きな窓をつけても、それがお隣の室外機の前であれば、その窓はずっとカーテンがしまるでしょう。
窓はどのように抜けるかが、建築の豊かさを作ってくれます。

敷地の現況ですが、1階は隣の大きな窓があります。おそらくお風呂かな。
2階は窓が小さいですが、やはり都市部のため、敷地いっぱいに家を建ています。
やっぱり、理想の家にはならないかと諦めるのはまだ早いです。
ここからが、設計者の楽しみです。

先日、「お客様に手書きで図面を書くのですね」と言われました。
いきなりCADで作図する人もいるようですが、イメージを掴んでいくのは鉛筆が良いです。上記写真はゾーニングという手法で、敷地周りの状況や住まい方を考え、色鉛筆などで、丸でエリアを書いていきます。

南側隣家の圧迫感を避けるため、一番北側に住居エリアを配置、道路面には事務所を配置し、L型に建物をつくることにより、中庭が取れそうです。

中庭と2階LDKを採用することにより、隣家への圧迫感から逃れ、空への抜けをを取ることができます。
最近は省エネブームなどで、窓からの日射取得を中心に窓を考える設計者も多いですが、先にも書いた通り、そこが魅力も何もない景色であれば、カーテンを年中締め、生活者は日射取得をせず、ただただ、夜に放射冷却をする寒さを助長するまどになってしまいます。

また、建物をL型にすることにより、中庭を様々な部屋・角度から楽しむことができます。

建築がつくる町並み

敷地の道路?です。基本的に4m道路が建築するには必要ですが、この敷地は満たしていないため、43条但し書きで、再建築することになります。

道路がない=車が入れないデメリットですが、逆転の発想をすると、
車は入らないことはメリットでもあると考えられます。

これは東京のある場所ですが、道路からのアプローチに緑が溢れ、とても豊かな町並みを作っています。

そんな事を考えながらスケッチを書き始めます。

これでお分かりいただけたかと思いますが、建築家は一般の方、不動産屋さんとはまた違った視線で敷地を見ています。
難しい敷地を見つけたら、建築家・設計事務所に相談されると、また違ったアイデアをもらえるかもしれません。

次回はせっかくなので、プランまで考えてみようと思います。