さて、前回までで外装と内装のご説明をしました。これらは建物が完成されたからも、目で確認できるため、多くの人が興味を持つ場所です。
しかし壁の中の断熱材は、必要なのは理解しているが、どこまでの性能にすればよいかは一般の方にはなかなか理解するのが難しいといえます。
断熱材に関して、解説していきます。
断熱材の価値
断熱材を簡単に説明すると布団だと思ってください。
もう少し詳しく説明すると、断熱材は「乾燥した空気を閉じ込めたもの」です。
湿気てる布団は心地よくなく、天日干し布団は暖かく心地よくなります。
実はペアガラスも同じく乾燥した空気を閉じ込めているのが重要です。
水分の多い空気は乾燥した空気に比べ、熱を伝えやすくなります。
90℃の室温のサウナにはやけどをせず入れますが、90℃のお湯にはとても入れません。
それだけ乾燥した空気は熱を伝えにくいといえます。
布団は干せますが、断熱材は壁から出して干すことはできません。
だからこそ、厚み云々のまえに隙間なく施工をして、湿気が入らないようにすることが重要です。
さもないと、例え薄くても大切な資産である断熱材が見るも無残な単なるカビの温床となってしまいます。カビた布団で寝たくないとの同様で、カビた壁の中で暮らすことは勘弁してほしいですよね。
断熱と防湿
先にも書いた通り、断熱材は隙間なく施工し、湿気が入らないようにすることが重要です。
しかしこの防湿の考えがなかなか普及しない。
理由としては温暖地では必要性を理解している人が少なく、かなり手間がかかるからです。
ですが、上記写真は現在進行中の現場写真です。
今回お客様の弟さんが、建売会社にお勤めで、その関連の大工さんが施工しています。
最初は中々理解してもれませんでしたが、お客さんのお金でした仕事をちゃんと活きるものにしようと話し合い、施工してもらったら、とても高品質な施工になっています。
今回で確信しました、できないと言っているのは建設会社の方で、大工などの職人さんは良い仕事をしたいと思っているということです。
1週間はかかると思っていましたが、3日ほどで防露(気密)シートの施工が完了していました。さすがですね。
防湿と気密
防湿の考えが普及しないもう一つの理由があります。
前述の写真を見て、私はきれいな施工だと感動したのですが、人によっては「息苦しいのでは?」とビニールに張り巡らせたのを見て思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実際は気密・防湿が施工された住まいは換気がうまく機能し、とても快適ですが、日本古来の住宅が気密防湿というものとかけ離れたた住まいだったため、その感覚が日本人は拭えないのでしょう。
日本の冬のイメージは囲炉裏ですよね。確かにいいなと思いますが、
自分の住まいが囲炉裏で良いと思う人は、現在かなり少ないのではないかと思います。
理由は「寒さ」です。囲炉裏の火にあたっている部分は温かいですが、背中は寒く、そのため、ちゃんちゃんこを着ていました。
ソファやテーブルでの生活が普及した現在、隙間がたくさんあって、家の中で火を炊いても問題ない住まいは、耐え難いものがあります。
ただし、防湿は日本の知恵を利用することができます。
昔の日本の住宅は土壁で作られていました。
透湿性のある土壁は室内の湿気を外に排出し、構造材を湿気から守りました。
同様に室内側から外に向けて、透湿性能の高い素材で構成していくと同様の効果をえて、防湿シートを省くことが可能です。
ただし、建物周囲に山林や池、川などがある場所は湿度が逆に室内に入って来る可能性があるので、注意が必要です。
遮熱塗料はどうなのか??
最近良く遮熱塗料の話を聞きます。
今日も工務店さんから相談がありました。
テレビのチカラはすごいですね。
私も一度見ましたが、遮熱塗料を塗装した鉄板の下に焚き火をして、
その上を人が裸足で歩くという、the TVショーと言う感じでした。
材料はその素材ごとに様々な特性があります。
先にあげた水と空気の温度の伝え方が違うのも同じです。
遮熱塗料の特徴は、日射を跳ね返すことにあります。
これにより夏に建物に日射が入り込むことを防ぎ、涼しくなります。
しかし、あくまでも「遮熱」であって「断熱」ではありません。
いくら調べても遮熱材で有名な商品の断熱性能を示す熱伝導率が見つかりません。
遮熱塗料は夏に効果を発揮しますが、冬の室内から室外に流れ出す熱伝導を防ぐことは断熱材に敵いません。
断熱材は夏の日射を防ぐことも、冬の熱伝導を防ぐことの両方が可能です。
特に屋根や天井は冬の上昇気流によって熱が多く逃げてしまいますので、
遮熱塗料のまえに、天井内にちゃんと断熱材を入れることが冬も夏も快適にするための近道です。
最近の酷暑で夏のエアコン代が気になるかもしれませんが、冬のほうが圧倒的にエネルギーも光熱費も使っています。
夏は35℃の外気温を27℃に抑えるため、つまり8℃下げるエネルギーですが、
冬は5℃を20℃に上げる、15℃のエネルギーが必要です。
夏に比べ、冬が長い地域は特に優先順位を考えてリフォームを考える事が重要です。
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