家づくりのご相談にみえる方の中に、
本当によく調べてこられる方がいらっしゃいます。
構造のこと、断熱のこと、補助金のこと。
私よりも新しい制度をご存じのこともあります。
ただ、そういう方ほど、
ある時期にこうおっしゃいます。
「調べて、調べて、調べ尽くして、
気づいたら何が正解かわからなくなりました」
結論から言うと、
家づくりに、万人に共通する正解はありません。
だから探すと迷路に入ります。
あるのは、あなたのご家族に合う形だけです。
ここを取り違えたまま調べ続けると、
情報が増えるほど決められなくなります。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、
調べること自体は間違っていないということです。
性能や構造を勉強するために
インターネットを使うのは、とても良いと思います。
UA値、C値、耐震等級。
このあたりには基準があり、答えがあります。
でも「わが家にとっての正解」には、
そもそも基準がありません。
基準のない問いを検索にかけると、
たくさんの情報の中で迷子になります。
しかもネットの情報は時間軸がめちゃくちゃで、
何年も前の記事が最新の顔をして並んでいます。
一度、試しにAIに
「幸せな家づくりの正解とは?」と聞いてみたことがあります。
返ってきた答えが、なかなか立派でした。笑
毎日の家事動線がラクであること。
断熱・気密・耐震という、見えない性能のこと。
家族の関係が良くなる間取りであること。
住んでからのお金の心配が続かないこと。
そして最後に、
あなたの価値観を優先すること。
建築士の言葉より良いかもしれない、と
苦笑してしまいました。
ただ、5つ並んだ最後のひとつだけは、
AIにも、私にも、代わりに書けません。
あなたの価値観は、
あなたのご家族の中にしかないからです。
ここで、私の立ち位置もお伝えしておきます。
がっつり、性能です。
付加断熱をしない、
許容応力度計算による耐震等級3を取らない。
その選択は、私にはできません。
断熱等級6以上、C値0.5以下。
これが広島で建てる私の家の下限です。
C値は自分で測ります。
気密測定の検査員でもあるので、
他社の現場に測りに伺うこともあります。
数値は、語るものではなく測るもの。
そう思っています。
その上で、デザインを、
予算が許す限りご提案する。この順番です。
とはいえ、情報をたくさん詰め込めば
良い家になるかというと、そうではありません。
そぎ落として、
本質的に大切なものは何かを考えていく。
そちらのほうが、ずっと大事だと思います。
会社選びで迷う理由も、ここにあります。
同じような看板を掲げていても、
許容応力度計算をしている会社と、そうでない会社。
付加断熱をしている会社と、そうでない会社。
自然素材を使う会社と、そうでない会社。
正直、さまざまです。
横に並べて比べようとしても、
比べる軸がそもそも揃っていません。
ついでに、ネット上の情報をひとつ訂正しておきます。
大手ハウスメーカーの家づくりが
完全に間違っているわけではありません。
私はインスペクションの仕事で、
いろいろな会社の家を見ています。
仕上げは、とてもきれいにできています。
既製品を使い、均一な仕上げで、
一定レベル以上の精度の家をつくる。
誤解を恐れずに言えば、
工業製品として見れば、とてもよくできています。
車と同じです。
ただ、そうではない家づくりもあるよ、
というのが工務店であり、設計事務所です。
自然素材を使い、
その地域に合った家をつくりたいと考えています。

全国均一な工業製品としての住まいでも
違和感のない方は、たくさんいらっしゃると思います。
どちらが正解かではなく、
自分たちの暮らしに合うのはどちらか、という話です。
そして、楽しい話ばかりでもありません。
ローンを返していくのはお客様なので、
リアルなお金の話もしなければなりません。
私は一級建築士とファイナンシャルプランナーの
両方の資格を持っているので、
設計とお金を同じ机の上で話します。
お金の話になると、
一気に現実に引き戻されます。
2〜3年で着つぶすつもりなら、
安いスーツでいいと思います。
でも生涯着るスーツなら、
オーダーでこだわると思います。
私の家づくりはハイブランドを目指していませんが、
街のオーダースーツのような
着心地、楽しさ、快適さはお届けしたいと思っています。
私も友人にスーツをつくってもらったことがありますが、
選んでいるときは楽しくて、
金額を見てびっくりしますよね。
夢とリアルの間は、少し苦しいです。
でも、そこも楽しんでいただきたいと思っています。
ところで、設計者は家づくりのとき
何を考えているのか。
お客様の熱量には、正直かないません。
なにせ一生に一度の家づくりですから。
私は住宅設計を生業にしているぶん、
お客様より少しだけ俯瞰した視点で見ています。
敷地模型をつくって考えることがあります。
30年後、50年後、この敷地はどんな景色になっているだろう。
そんな時間軸で考えます。
お客様が調べる家づくりは「個」の家づくり。
設計者が考えるべきは「全」の家づくり。
これは設計者だけの話ではありません。
模型をつくらなくても、できることがあります。
地図で敷地を眺めてみる。
隣にどんな暮らしがあるのか想像してみる。
これから建つ家が、
町の魅力にどんな影響を与えるか考えてみる。
そんなふうに眺めてみると、
「個」の条件だけを追いかける家づくりよりも、
もしかすると少し楽しくなるかもしれません。
家は一棟で完結するものではなく、
敷地にも、町にも、未来にも開いていくものだと思います。

最後に、迷路から出る一番の近道を書いておきます。
なぜ、家がほしい、建て替えたい、
リノベーションしたいと思ったのでしょうか。
そこには、家族の存在が
大きくかかわっていないでしょうか。
自分ひとりだったら、家づくりをしますか。
費用対効果で自分を納得させるのは、
たしかに家づくりの大きなステップです。
でも、それは過程でしかありません。
順番は「家がほしい、なんとかしたい」のはずです。
その根本を忘れて、
失敗しない家を探し始めた瞬間に、迷宮に入ります。
家づくりをする意味が明確になれば、
迷いませんし、選択肢も間違えません。
そして、その家づくりのパートナーは、
決して焦って決めないようにしてください。
暮らしが楽しくなる家づくりを、しましょう。
**家づくりの情報は、どこまで調べればいいですか。**
基準のあることは、調べる価値があります。断熱等級、C値、耐震等級、住宅ローンの返済比率。ここには答えがあるので、調べれば調べるほど判断が正確になります。一方で「わが家にとっての幸せな家とは何か」には基準がありません。この問いを検索にかけても答えは出ないので、ご家族で話す時間に振り替えてください。
**ハウスメーカーと設計事務所、どちらが正解ですか。**
どちらが正解ということはありません。既製品を使って均一な精度でつくる工業製品としての住まいと、地域と敷地と暮らしに合わせてつくる一点ものの住まいは、そもそも別のものです。インスペクションでどちらも見てきましたが、大手の仕上げの精度は本当にきれいです。全国均一な住まいに違和感のない方もいらっしゃいますし、そうでない方は工務店や設計事務所を回ってみてください。
**家づくりのパートナーは、いつ決めればいいですか。**
焦って決めないことが一番大事です。ハウスメーカーを回ってから工務店や設計事務所を訪ねて、まだ迷っている。それが普通の状態だと思います。決め手になるのは仕様の比較よりも、自分たちのライフスタイルに合う考え方をしている人かどうかです。何社か回って、話していて疲れない相手を選んでください。
よくある質問
家づくりの情報は、どこまで調べればいいですか。
断熱等級、C値、耐震等級、住宅ローンの返済比率。測れば数字が出るものは、調べるほど判断が正確になります。一方で「わが家にとっての幸せな家とは何か」には基準がないので、検索ではなくご家族で話す時間に振り替えてください。
ハウスメーカーと設計事務所、どちらが正解ですか。
どちらが正解ということはありません。既製品で均一な精度をつくる住まいと、地域と敷地と暮らしに合わせる一点ものの住まいは、そもそも別のものです。全国均一な住まいに違和感のない方もいますし、そうでない方は工務店や設計事務所を回ってみてください。
家づくりのパートナーは、いつ決めればいいですか。
焦って決めないことが一番大事です。何社か回ってまだ迷っている、というのが普通の状態だと思います。決め手になるのは仕様の比較よりも、自分たちの暮らし方に合う考え方をしている人かどうかです。
プレゼントデザインでは、家づくりの判断材料になる話を「ほぼ日刊」で毎朝お送りしています。
性能のこと、お金のこと、現場で見てきたこと。読むのをやめるのも自由です。


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