平屋にするか、2階リビングにするか。
家づくりを考えはじめると、
多くの方がここで一度迷います。
年を取ってからも1階で生活が完結できるように、
と1階LDKを選ぶ方が多いですし、
だからこその平屋人気ですよね。
最初から平屋を建てれば、
ずっとワンフロアで暮らすことができます。
ただ、設計者としては、
そもそも考える軸が違うと思っています。
Contents
平屋か2階リビングかは、敷地で決まる
結論から言うと、
平屋にするか2階リビングにするかは、
将来の足腰ではなく、敷地で決めるものです。
平屋に向いている敷地と、
2階リビングに向いている敷地がある。
広島で一級建築士として住宅の設計を続けてきて、
いちばん強く感じていることの一つです。
まず、小さな敷地に
家族4人の家を建てるということであれば、
物理的に2階建てにせざるを得ません。
平屋を建てられる広さがぎりぎりあったとしても、
それがよい選択とは限りません。
敷地いっぱいに平屋を建てると、
どこの窓からも景色は見えず、
隣の家からの視線が気になる暮らしになります。
設計のポイントは、
敷地に余白をつくることです。
余白を優先して考えると、
都心部には2階建てでもぎりぎりという敷地があり、
1階LDKにしても景色がほとんど取れない。
それであれば、2階LDKにして、
空を抜くことを考えます。

ワンフロアで暮らすことにこだわりすぎて、
暮らしやすさを手放さないようにしてください。
間取りに「正解」はない
正解の間取りを探している方には、
ごめんなさい。
正解の間取りは、実はありません。
特に一戸建ての場合、
敷地条件によって間取りは大きく変わります。
私が設計した家も、
一つとして同じプランになったことはありません。
ただ、良い間取りになるヒントはあります。
できるだけ、廊下を短くすること。
少し前の日本の住まいは、
家の真ん中を廊下が通る中廊下型が多くありました。
廊下もリビングも、坪単価は変わりません。
ただ通るだけの場所は、少ないほうが好ましいのです。
玄関からホール、
そしてリビングやダイニングへ。
そんな動線ができるとスムーズです。
縦長や横長の土地で、
玄関から心地よい場所まで距離がある場合は、
廊下をただ通る場所にしない。
シューズクローゼットからの裏動線や、
水回りへの動線を重ねてあげると、
廊下の役割が増えて、
もったいない感じが減ります。
2階に浴室を置く、という選択
2階リビングと並んで、
よく驚かれるのが「2階の浴室」です。
以前設計した家で、
リビングは1階、浴室と脱衣洗濯室は2階、
という間取りにしたことがあります。
理由は、総二階に近づけるためです。
みんな平屋を建てたいと思うわけですが、
敷地条件もありますし、平屋は高くなります。
総二階のほうがコストパフォーマンスはよいのですが、
1階LDKの場合、
玄関、シューズクローク、洗面、浴室、トイレ、
最近では洗濯室なども1階に集まります。
そして2階は、子ども室と寝室、クローゼット。
こうなると、2階のほうが
圧倒的に面積が小さくなるわけです。
そこで、浴室と洗濯室を2階へもっていく。
そうすれば、1階と2階の大きさが近づきます。

デメリットは、水回りが離れるので、
家事動線がどうなるかということ。
要するに、キッチンと洗濯室が離れます。
これもよく言われますが、
調理しながら洗濯機を回すことが
実際にどれだけあるのか、
もう少し考えてみてもいいかもしれません。
お子さんがたくさんいらっしゃれば
あるのかもしれませんが、
それも子育ての中の一瞬です。
寝間着を毎日洗う人もいれば、そうでない人もいる。
そのあたりの感覚も、家族それぞれです。
「階段を上がれなくなる将来」を基準にしない
平屋がいい、
1階で生活が完結するように和室を設けたい、
2階リビングはちょっと……。
これは全部、
階段を上がれなくなるくらい足腰が弱る将来を
想像しているのだと思います。
でも、全員が歩けなくなると
決まっているわけではありません。
私の母は77歳のときも、2階で寝ていました。
あなたの周りの高齢の方も、
全員が階段を上がれないわけではないはずです。
そして、最悪の未来を想像して設計することが
正しいわけでもありません。
たとえば「車いすが入れるトイレを」と
言われる方がたまにいらっしゃいますが、
介助まで考えると、
2m角近い広さが要ることもあります。
車いすで入ってトイレで用を足すのは、
たとえば若い人が怪我をして
車いす生活になった場合です。
そのときは玄関の段差など、
トイレ以外にもさまざまな改修工事が必要になります。
年を取って2階に上がれなくなったころには、
そもそも一人でお風呂に入れるのか、
という状況になっているかもしれません。
2階に浴室を置いたあの家のお客様は、
決まっていない未来を重要視せずに、
小さなお子さんと広い庭で遊ぶことを
大事にされただけです。
もし若いうちに2階へ上がれなくなるようなことが起きれば、
そのときに改修や、
敷地に余裕があれば増築で対応すればよいのです。
住まいに完成はありません。
未来が変われば、家も変わればいい。
将来は明るく想像して、
「現在」を大切にしてください。
家族が集まるのは「快適なリビング」
もう一つ、2階リビングで心配されるのが
家族の会話です。
家族の会話を増やす工夫として、
よくリビング階段が挙がります。
子どもが帰ってきたときに、
家族のもとを通らないと自分の部屋に行けない。
家族との距離を考えると、とても大事なことです。
子ども部屋を大きくしすぎないことも同じです。
部屋の中で何もかも完結してしまうと、
出てこなくなります。
ところが2階リビングにすると、
子ども部屋や寝室は1階になることが多く、
リビングを通らずに子ども部屋へ行けてしまう。
こんなことを考え始めると、
やはり2階リビングは良くない、
という話になってしまいます。
そこで、日当たりも景色もよくないと分かっていて、
1階リビングにする。
何が起きるか。
2階のほうが快適だから、
子どもたちは降りてこない。笑
間取りの話もとても大事ですが、
私は「快適なリビング」をつくることを
重要視してほしいと思っています。
心地よい場所があれば、人はそこに集まります。
猫が日当たりのよい縁側に陣取るのと同じです。

もちろん、子どもの成長の段階によっては、
家族の会話が減る時期もあります。
それは決して悪いことではありません。
心地よい場所と、心地よい家族関係があれば、
家族は集まり、会話は増えていきます。
形から入るのもよいのですが、
本当に大事なものをちゃんと見つけてください。
よくある質問
2階リビングに向いているのは、どんな敷地ですか?
周りを家に囲まれて、1階に日が入りにくく景色も取れない敷地です。市街地の狭い敷地なら、2階にLDKを上げて空を抜くほうが明るく、隣からの視線も気にならない暮らしになります。
2階リビングにすると、子どもとの会話が減りませんか?
間取りの形だけでは、家族は集まりません。日当たりの悪い1階リビングにしても、2階のほうが快適なら子どもは降りてきません。まず、家族が自然に集まる快適なリビングをつくることを優先してください。
浴室を2階に置くデメリットは何ですか?
キッチンと洗濯室が離れるので、料理と洗濯を同時にする家事動線は長くなります。その代わり1階と2階の面積が近づいて総二階に近い形になり、コストパフォーマンスがよくなります。同時に家事をする場面が実際にどれだけあるか、家族で話してから決めてください。
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