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土砂災害警戒区域に家を建てるか|イエローとレッドの線引き

広島で設計事務所をしている、
一級建築士の川端です。

土地を探していると、
「この土地、イエローゾーンなんですよね」
という場面に、かなりの確率で出会います。

山の近くに町が広がる広島では、
土砂災害警戒区域を避けて土地を探すと、
選べる土地が一気に少なくなります。

では、土砂災害警戒区域に
家を建ててよいのか。

結論から言うと

イエローゾーン(土砂災害警戒区域)は、条件つきで建ててよい。
レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)には、原則として建てない。

これが、私がお客様にお話ししてきた答えです。

ただし、イエローならどこでも良いわけではなく、
レッドなら絶対に無理というわけでもありません。

その線引きを、
私が現場で見てきたことから書いてみます。

津波と土砂は、建物では止められない

最初に、私の考えの土台になっていることを書いておきます。

地震については、
耐震性能を高めることで、
被害を小さくすることができます。

しかし、津波はどうか。

東日本大震災のあと、
宮城、岩手をレンタカーで走りました。

正直に書きます。無理です。

津波に耐える建築をつくることは、
不可能だと断言します。

防波堤が壊され、
船が家に突っ込んでくるような状況です。

日常の感覚で言えば、
車やトラックが家に突っ込んでくるようなものです。

躯体を鉄筋コンクリートにすれば、
建物そのものは残るかもしれません。
でも、窓は耐えられません。

土砂崩れも同じです。
水と土砂が、家の中に流れ込んでくる。

それに耐えられるのは、
窓も何もない空間、
つまりシェルターだけです。

そして、シェルターは家ではありません。

津波と土砂災害に対しては、
人の手でできることには限りがあります。
だからこそ、どこに家を建てるかがとても重要になります。

山を背にした住宅地に建つ木造二階建ての家の外観
広島では、家のすぐ後ろに山があることも珍しくありません。だからこそ、どこに建てるかから一緒に考えます。

2014年8月20日の広島の土砂災害は、
私が初めて身近に体験した土砂災害でした。

すぐ近くに、工務店時代に建てさせていただいた
お客様の家があり、
本当に怖くなったのを覚えています。

レッドゾーンを「外す」という方法

レッドゾーン、土砂災害特別警戒区域は、
土砂が建物に及ぼす力が大きい場所として指定されています。

ここで家を建てる場合は、
その力に耐えられる構造が求められ、
現実的には鉄筋コンクリートで受け止めることになります。

ただ、先ほど書いたとおり、
住まいには窓があります。
ガラスは土砂に一瞬で壊されてしまう。

なので私は基本的に、
「レッドゾーンには建てない」と
お客様にお話ししてきました。

ところが、友人から相談を受けたときに知ったのですが、
レッドゾーンでも、木造の家を建てる道があります。

ひとつは、斜面側に鉄筋コンクリートの塀や擁壁を設けて、
土砂の力を家の手前で受け止める方法。
もうひとつが、ここからお話しする方法です。

レッドゾーンを外すのです。

地理的に場所をずらす、という意味ではありません。

レッドゾーンに指定されている
リスクの高い斜面そのものを補強して、
レッドゾーンではない斜面に変える工事をする、ということです。

もちろん、とてつもなく広い斜面であれば、
個人の力ではどうにもなりません。

ただ、場所によっては、
危ないのは一部の斜面だけ、ということもあります。
そうであれば、予算の範囲に収まる可能性があります。

レッドゾーンの土地は、価格が大きく下がります。
その安くなった分で、
土砂災害のリスクを減らす工事を行う。
これも選択肢の一つかもしれません。

ただし、その擁壁がきちんと機能し続けるように、
メンテナンスをし続ける覚悟が必要です。

工事をして終わり、ではありません。
慎重な判断が要ります。

イエローゾーンをどこまで気にするか

では、イエローゾーンはどうか。

以前、中古住宅のインスペクション(建物状況調査)の仕事で、
裏手が山になっている家を調査しました。

不動産屋さんは
「この地域はイエローゾーンが多い場所ですよ」と。

あまり気にしすぎると家なんて買えないよ、
と暗に言っているわけです。

確かに、私もその意見には一部賛成です。

イエローゾーンを気にしすぎると、
広島のように山の近くに町がある地域では、
家を持つことがかなり厳しくなります。

私のお客様にも、
イエローゾーンの端であれば、
「大雨のときは家から車が出せなくなる」ことを前提に、
備蓄などをしておけば良いと思います、とお話ししています。

しかし、そのとき調査した物件は違いました。

イエローゾーンが3か所ほど重なっていて、
すぐ上にレッドゾーンがある。
しかも、そのレッドゾーンには竹が多く生えている。

上の斜面が崩れれば、
竹林ごと倒れてきて、
家をたたきつける、
あるいは窓を突き破る可能性があります。

インスペクションでは、
購入の是非を言ってはいけないというルールがあるので、
「買わないほうがいい」とは言えません。

ただ、「この窓はつぶしたほうがいいですね」
とはアドバイスしました。

裏手の外壁に小さな窓だけを設けた住宅の外観
窓をどこに開けるかは、景色や光だけでなく、裏に何があるかでも変わります。

同じイエローゾーンでも、
端にかかっているのか、何重にも重なっているのか。
すぐ上に何があるのか。

地図の色だけでなく、そこまで見てほしいと思います。

砂防ダムができても、イエローゾーンは変わらない

広島で大きな土砂災害があったエリアが、
いまどうなっているか。

すでに、建売住宅が建っています。

もちろん砂防ダムも整備されています。

ただ、砂防ダムは、土砂がたまると
働きが落ちていきます。
つくって終わり、ではないのです。

「砂防ダムができたから大丈夫です」
と説明されているかもしれませんが、
イエローゾーンであることは変わりません。

さらに、価格を抑えた住宅は、
断熱性能や耐震性能も低めになりがちです。

それでも、安くても2,000万円程度はする。
ご家族にとっては一生の買い物です。

売れればよい、という家の売り方は、
とても怖いと感じます。

施工中の木造住宅の壁に断熱材が入っている様子
完成すると見えなくなるところですが、断熱と耐震は建ててからでは変えにくい部分です。

どこに住むかも、家づくりのうち

土砂災害は、もうどこで起きてもおかしくありません。
おそらく、土砂災害が起きない年は、
今後はないのだと思います。

昔の夏は、夕方にざーっと雨が降って、
夜にはやんで涼しくなる、という暮らしでした。

今は、夕立のような雨が一日中降り続ける。
警報で夜中に何度も起こされる、
ということも珍しくなくなりました。

本来は、行政がリーダーシップをとって
危ない場所に家が建たないようにするべきことです。

でも現時点では、
災害が起きてから動くことが多いのが実情です。

結局、自分と家族の命や財産を守れるのは、
自分自身です。

家を建てる前、土地や中古住宅を買う前に、
まずはハザードマップで、
その場所にどんなリスクがあるのかを確かめてください。

イエローゾーンなら、
どこにかかっているのか、何が上にあるのか。
レッドゾーンなら、
建てないのか、外す工事をして維持し続けるのか。

断熱や耐震の性能は、
建ててからでは変えにくいものです。

でも、場所は、
建ててからでは絶対に変えられません。

どこに建てるかも、
家づくりの大事な一部です。

よくある質問

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に家を建ててもよいですか?

イエローゾーンには建築の制限が無く、条件つきで建ててよいと考えています。区域の端にかかっているだけか、何重にも重なっているか、すぐ上の斜面に何があるかを確かめてください。大雨で車が出せなくなる前提で、備蓄をしておくことも大切です。

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)では家を建てられないのですか?

建てることはできますが、土砂の力に耐える構造が求められ、窓のある住まいとしては難しいため、原則として建てないことをお勧めしています。危ない斜面が一部だけなら、対策工事で区域を外せる場合もあります。その場合も、擁壁を維持し続ける覚悟が必要です。

近くに砂防ダムができれば安全ですか?

砂防ダムは、たまった土砂を取り除いてこそ働き続ける施設で、つくれば終わりではありません。砂防ダムがあってもイエローゾーンはそのまま残ることが多いので、ハザードマップで区域を確かめてから判断してください。


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