私は日本エネルギーパス協会の西日本講師をしています。
このエネルギーパス協会はもともと、車や家電では当たり前になっている
燃費表示を住宅でも普及させるために発足された会です。
しかし、発足は10年前、今は大分現状が変わってきています。
日本のエネルギー表示 BELS
温暖化や原油価格の高騰が注目される中、
日本でもあらたにBELSというエネルギー表示が始まりました。
上記は実際のBELS評価書ですが、
この中にZEH(ゼロエネルギーハウス)の評価もあり、
補助金を申請する際には必須となっています。
設計の実務的には作業として2日、審査機関とのやり取りで1日程度。
申請費も含めると10万円ほどで、取得が可能ですが、
設計事務所、工務店も含めて、こういった書類の苦手意識が多い人もいて、
一部でしか利用していない状況です。
自分の作っている燃費(エネルギー性能)がわからないなんて、
実務者として失格だと思いますが、残念ながら興味がない人が多いです。
しかし、このBELS、家電などの表示と違うところがあります。
家電の場合は、星の数と合わせて、しっかりと年間の光熱費が記載されています。
住宅のBELSは一般の人にとって、とても分かりにくいといえます。
民間CADソフトによる性能表示
一般向けではないBELSの代わりに私を含めた省エネのエキスパート達は
様々な性能シミュレーションソフトを活用でしています。
まずは私が講師を務めています、エネルギーパス協会は
エネルギー表示に加えて、光熱費を提示しています。
これにより、初期コストだけではなく、30年、40年等
住宅の対応年数に応じた、「生涯住宅コスト」の比較検討が可能になります。
続いてはパッシブハウスジャパンがCPUと合同で開発した
建物燃費ナビが上記です。
光熱費が出るのはエネルギーパスと同様ですが、
より細かな入力が可能で、エネルギーパスが「共通のものさし」に対して、
建物燃費ナビはシミュレーションソフトと言えます。
前述のエネルギーパスも燃費ナビも私は所有していますが、
現在、私が主に使っているのは上記のホームズくんというソフトです。
東大の前准教授が開発に参加していることもあり、燃費ナビ同等以上の
細やかなシミュレーションが可能になっています。
私がホームズくんを利用しているもう一つの理由は、「構造」もシミュレーションできることです。
現在は建物の省エネ化がブームとなっていますが、
散々、このブログでも書いてきましたが、省エネは住宅を評価する一部でしかありません。
そのため、構造性能も私は重視します。
超低燃費な車が事故を起こしたときに、中の人を守れないなんておかしいですからね。
北海道の取り組み
出張過多の私ですが、懲りずに11月22日−23日に北海道に行ってきました。
メインの目的はあるプロジェクトのための視察ですが、
帰りの飛行機に乗る前に、札幌の山本亜耕さんにあってきました。
私はドイツなどを視察して、海外の省エネ建築の先進性を見てきましたが、
北海道はそれに負けるどころか、挑戦をし続けてきた世界的にも先進的な地域です。
そこで見た建物性能の見える化は以下のものです。
北海道で行政、金融機関、不動産、建築が一緒になりつくった建物のラベリング制度です。
上記のように省エネ性能だけではなく、耐震性もちゃんと評価されています。
住まい手目線から考えると当然のことですが、この評価を受けたものは
行政から補助金をもらえたり、金融機関から特別金利で融資が受けれたりするそうです。
地域でこうした枠組みをつくることがとても素晴らしいことです。
CASBEEの可能性
そんな中、前回でブログで紹介したLCCM住宅のため、
CASBEEという評価プログラムの入力をここ一週間行っていました。
日本には様々の評価プログラムがあり、使いこなすのが大変です。苦笑
私も10年前にCASBEE評価講習を受け、資格を取ってましたが、
使うのはそれこそ10年ぶりくらいでした。。
結果、、悪くないんですよね。実は
CASBEEは環境を評価するソフトで、省エネ性だけではなく、
きた住まいるがしているのと同様、構造、維持管理も評価します。
それだけではなく、緑化などもきちんと評価するようになっています。
建築に身を置くものとして、住宅だけではなく、町としての価値を上げていきたいと考えます。
その場合、コンクリートにカーポートだけという、外構より、
野鳥がやってくる庭を作り込むことが重要だと考えます。
まさしく、建築家向きの評価ソフトと言えるかもしれません。
緑を評価する
事務所近くのイチョウです。
現在計画中のこども園で、園庭に樹木を植えることを提案したときに
理事長先生が、ご近所への落ち葉を気にされました。
しかし、このイチョウの木の下には毎年、その落ち葉で写真撮影を楽しむ市民が集まります。
山本亜耕さんに案内していただいた、南幌町の住宅から見える景色です。
この住宅は真南を向いていません。
省エネ設計にマニアックになっていくと、どれだけ真南に正対させるかを競いますが、
その真南が隣家の真後ろだったら、その住まいは暮らしを楽しむことができるでしょうか?
省エネ住宅に重心を置く私ですが、
住まいを楽しむことを忘れてはいけないと考えています。
落ち葉を掃除する中で、子供との触れ合いもあるでしょう。
そんな家づくりを大切にしたいと考えています。
最近のコメント