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アパートの空き家対策

ファイナンシャルプランナー建築士 川端です。

今回は戸建住宅ではなく、アパートについて書きます。

ここ最近、アパートがたくさん増えたと思いませんか。

こんな感じの建物たちです。

「夢のマイホーム」といいますが、実は賃貸住宅より着工数は少ないんです。

ですが、

実はこのアパートがヤバいんです。

なぜ、一定数 毎年賃貸住宅が建てられ続けているのか、その理由は大きく2つ。

一、相続税対策

二、不動産投資

です。

土地などの不動産が多い場合、借入をつくることにより、相続時の節税対策、

また、最近の投資ブームにより、利回りが計算しやすい不動産投資が選択されています。

しかし、少しアパートを取り巻く環境が変化しつつあります。

その状況とその対策を考えていきます。

人口減少はすでにはじまっている

明治維新以降、人口はうなぎ登りでしたが、

2004年にピークアウトしました。

10年後の2030年には高齢化率が30%を超えます。

つまり10人中3人は高齢者になるということになりますが、

高齢者が住居を移転したり、新築する潜在力は現役世帯に比べ低くなります。

これは空き家率に影響を与えています。

相続税・投資の手段として増える賃貸にくらべ、人口が減っているので、

当たり前ですが、需要と供給のバランスが崩れ、空き家が増え続けています。

これは地方になる顕著にでてきます。

広島県内を見ると、廿日市市・広島市・府中町・海田町・福山市は

全国平均の13.6%の空き家率ですが、その他のエリアは全国平均を超えています。

まさに借り手市場な訳です。

新しいもの好きの日本人。年数がたったアパートでも選んでもらう作戦が必要です。

アパートを出る理由とは?

アパートの不満の上位は「広さ」に関するものが圧倒的ですが、

それは契約時に理解した上で、入居しています。

しかし、入居後の不満上位は音の問題、暑さ寒さの問題が多くあります。

これらは一時間程度の内見ではなかなか気づかない問題です。

しかも、この断熱性能と音の問題は親和性のあることなのです。

断熱材と吸音材の共通の材料であるのはグラスウールです。

グラスウールなどの繊維系の断熱材はその繊維の中に乾燥した空気を閉じ込めることにより、

熱を通しにくくしています。

音の問題に関係している吸音性は壁の中に繊維があるとそこに音のエネルギーが伝わり、

繊維などが振動することにより、音の強さが衰退されます。

上記のように一般外壁と高気密高断熱の外壁では10dB以上遮音性能の差が生まれます。

遮音性能をより高めるために

私も双子の子育てをしている(もうすぐ中学生!!)ので、子供の泣き声って、親としては近所迷惑だし、

なんとかしたいと思っても、なかなかうまく行かないものです。(私は車に乗せて、夜中の3時にウロウロしてました。)

アパートの壁は薄いというイメージがありますが、

昨年、建築基準法違反で大手メーカーが話題に上がっていました。(気になる人は「界壁 違反」で調べてみてください)

この界壁の考えは隣に火が燃え広がらないための防火性能だけではなく、「遮音性能」も求められているんです。

界壁に隙間なく遮音材(断熱材)を入れれば、隣の家の音も気にならなくなり、快適に住めるのですが、、

実際はなかなかうまく行っていないケースが多いようです。

遮音材(断熱材)が隙間なく入っているのかも重要です。

古いアパートや、初期コストばかりを重視すると、隙間だらけの界壁では音は防げません。

 

隙間なく界壁が作れたとしても、完璧ではありません。

壁は断熱材だけで作られてるわけではなく、柱があります。これも木造や鉄骨など工法は様々。

音を減衰させるには材料が重けれ重いほど、良いのですが、

コンクリートに比べ、木造や鉄骨は軽く、音の振動を隣の部屋に伝えていまします。

集合住宅に住む人は、ある程度の音は許容しているかと思いきや、意外と色んな人が住んでますし、

隣人を選ぶことはできません。

実は簡単な解決策があります。それは界壁を二重に立てること、

音は基本的に振動で伝わっていきますので、途中に中空層(隙間)があれば、音は伝わりにくくなります。

一枚ガラスとペアガラスで、外の音の入り方が違うのと同じです。

これは実際の二重壁の写真です。

間取りによりますが、柱材や断熱材の値段を考えても、住戸間の二重界壁の施工は20万円〜30万円程度です。

この投資で、音漏れのないアパートをつくることができれば、

断熱性能も高まり、住民が長く快適に住んでくれます。

初期コストも大事ですが、空き家率をさげることが、アパート経営には重要です。

また、もちろん二重界壁をつくり、窓やその他部位の断熱改修を行えば、暖かく涼しいアパートになります。

光熱費も下がることになりますので、太陽光発電とセットすれば、光熱費0アパートとして、

借り手にもオーナーにもお得なアパートを作ることも可能です。

ご興味がある方は下記よりご相談ください。(広島県外の方もOK)

お問い合わせ

何のためにアパートを経営するのか?

そりゃ金だぜ!って人は、このブログはあまり参考にならないのかもしれません。

私はやはり、ファイナンシャルプランナーである前に、建築士だと思います。

建築の仕事をしていると、戦後の混乱期に人々のためにアパートを建てたオーナーに出会います。

そんなオーナーさんは安い家賃しか取らないので、修繕費にお金が回せず、

老朽化が進み、入居者が減っていくという悪循環を繰り返しています。

実はそんな心優しいアパートオーナーと生活弱者を助ける制度があります。

セーフティネット住宅と言って、

「住宅確保要配慮者」低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯が住居を探しているときに、

セーフティネット住宅に登録したオーナーは断らずに、入居させることになっています。

これだけでは、アパート運営が難しくなると考えられるかもしれませんが、

補助制度もあります。

一棟ではなく、一住戸当たり最大100万円補助されますので、

既存のアパートをお持ちのオーナーも先に上げた遮音工事を含め、

耐震改修も補助金を利用することができます・

自治体によっては対象の住宅確保要配慮者を絞ることも可能ですので、

各自治体に相談してみてください。

自治体お問い合わせ先

補助金問い合わせ先

コンバージョン(用途変更)という選択

この写真は埼玉県草加市のアパートのコンバージョン(用途変更)をした計画です。

このアパートのオーナーは数年前まで、3棟のアパートを所有していましたが、

1棟が完全に空き家になり、草加市に相談し、取り壊し公園として、市に寄付しました。

そして、また1棟空き家になったため、再び草加市に公園としての寄付を持ちかけたところ、

「そんなに公園はいらない」とのことで、草加市のDIYアドバイザー講習に参加していた

建築士である小嶋さんを紹介したそうです。

小嶋さんとは同じ省エネグループでご一緒させていただいたことがあり、

私も見学させていただきました。

このアパートは「シェアアトリエ つなぐば」として生まれ変わり

飲食店を開くためのスタートアップの場所であったり、

近隣のアーティストの作品の展示場、お母さんたちの情報交換の場所へと生まれ変わり、

人が集いはじめると、空き室で美容室をしたい人や、工房をつくったり、

最終的には小嶋さんも事務所を移転することになりました。笑

詳しくはこのブログで詳しく書かれているので、読んでみてください。

紹介ブログ

冒頭でも書きましたが、人口減少はもう止まらないので、

徐々に空き家が増えていくのは、避けられない現実があります。

でも、魅力のある場所には人が集い、そこには活気が生まれます。

実際、シェアアトリエつなぐばは商店街の雰囲気があります。

近くのショッピングモールが空き店舗利用として、ここに視察にくるほどです。

お金目的で不動産投資することを否定するつもりはありませんが、

その街に本当にアパートが必要かを考えてないと、

増え続けるコンビニのように顧客の争奪戦に巻き込まれ、

数年で投資したお金が無駄になるだけではなく、

空き家の多い街は治安が悪化し、人々が住むのを倦厭するという負のスパイラルになることも頭に入れてください。

街の再開発

人口減少が進んでいることと、住宅が余っていると冒頭で書きましたが、

実感がある方は少ないのかもしれません。

上の写真は戦後から現代に至るまでの広島のある町の航空写真です。

戦後の高度成長で、たくさんの住宅が作られました。

そこには自然豊かな山々がありましたが、木を倒し、山を削り。

結果、温暖化とともに大雨や台風が増え、土石流としてこうした街を襲っています。

そして、アパートの新築同様、いまだに山を削り、団地が作られていきます。

私は昨年の3月に京都造形芸術大学院(通信制)を卒業しましたが、

卒業制作のテーマは「ニュータウンの再生」としました。

これも広島のニュータウンの一部です。

日本では経済が優先され、どれだけ宅地が多く取れるかを考えて、住宅街が造成されます。

実際、私が目にしたのは地元では有名な桜の山を、一本も残らず伐採して、造成したのは衝撃とともに

信じられませんでした。

ドイツのヴォーバン地区では地面から1mの高さで幹の太さが40cm以上ある樹木を伐採することは違法です。

そのため、樹木の位置をプロットすることから、造成は始められ、

樹木の間に住宅が建てられます。

ドイツなどの取り組みをヒントに、新たに造成するのではなく、

空き家が増える古い団地を元あった風景に少し戻し、等高線にあわせや段々畑にした長屋を計画しました。

 

最後に少し、宣伝っぽくなり恐縮ですが、

私はこうした仕事をしたいと考えています。

自分自身の利益になることも大事だと思いますが、未来への投資になることを考えれるのは

今の大人だけだと思います。

上記は実際の江戸の街の写真です。

江戸の街は西洋人が驚くほど、美しい街だったそうです。

日本が人口爆発する前ですが、この時代に戻れないにしても、

「未来への投資」という意味では学ぶことは多いのではないでしょうか。