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コストバランスの良い間取りの考え方

家づくりを考える時、皆さんが一生懸命考える間取り。

建築士ではない一般の人も、簡単に書けるイメージがあります。

実際、エクセルなどを駆使して、書いてこられるお客様も結構いらっしゃいます。

しかし、一般の人が考えると色んな課題がある間取りになりがちです。

そこで、一級建築士歴 20年の川端が、間取りのコツをお伝えします。

周辺環境を読み取る

間取りを考える中で、一番重要なことはその敷地が持つ条件です。

ここで、良い間取りになるかどうかが決まると言っても過言ではありません。

大きな窓が欲しいと思っても、その窓の向こうに隣家の窓があれば、

カーテンを開けることのない、窓となりますし。

いくら高気密高断熱住宅であったとしても、太陽の動きを考えずにつくれば、

機械に頼ったメカメカ住宅となってしまいます。

まずは敷地に行って立ち、色々と想像することが重要です。

たまにハウスメーカーの設計者が現場を見ずに設計すると聞きますが、

それはありえません。

周辺の緑の位置、近隣住宅の高さ、屋根形状、窓の位置、車の通行量などなど、

現場に行かないと気づかないことはたくさんあります。

想像力豊かに敷地を見ると窓の大きさで、隣家のリビングや水回りの位置が読み取れます。

また、倦厭される西日ですが、そこに落葉樹があれば、日射遮蔽をしてくれる

素晴らしい借景の景色になるという間取りのヒントがもらえます。

先にも少しお伝えしましたが、一般の方がいう「明るくしたいので窓」という思いと

プロが考える「窓をどこにとる」かは必ずしも一致しません。

窓は冬は無償の暖房器具となりますし、夏は家を熱くする要素でもあり、

そこから見える景色によっては、開かずの窓ともなります。

「南に大きな窓があれば、暖かい家になる」という条件は

都市部などではかなり慎重に考えないといけないこともあることに注意が必要です。

敷地を間取る

周辺環境を読み解くことができれば、次は敷地を間取ります。

冒頭でエクセルで間取りをつくる一般の方がいらっしゃるとご紹介しました。

または、無料の間取りアプリもあったりする、便利な世の中です。

ですが、あえて私は鉛筆で、間取りを考えることをおすすめします。

細かな寸法を追いかけていく段階になれば、もちろんパソコンは優秀ですが、

どのような生活を送ることができるかの想像力を働かせる事が重要な間取りは

鉛筆のほうが向いていると考えます。

まずは簡単に丸を描きながら、「ここがリビングが気持ち良さそうだな」と考えてみてください。

「間取り」という言葉は部屋を作っていくというイメージが強いですが、

家づくりで一番重要なことは、「居場所」をつくることです。

窓の話と全く同じで、いくら広いリビングを計画しても、

そこが寒くて暗く、隣の家しか見えないのであれば、そこには人は集まりません。

今回の敷地では南西にあえて、リビングを持っていく案にしました。

そして駐車場は南東へ。そうすれば、玄関も東側へと、外回りの動線を意識して

ゾーニング(敷地を間取ること)をしていきます。

動線のコントロール

現代は共働きの家庭も多く、ひとり親の方も増えてきています。

そんな忙しく働く私達がくつろぐ場所を中心に家づくりを考えてしまうと、

動線がながく、ひたすら家の中で歩き続ける住宅となってしまいます。

昔から、キッチンと洗面所の動線を良く言われてきました。

最近では、花粉症やPM2.5の影響や、共働きのため外に洗濯物が干せないことから、

室内干しを兼ねた、家事スペースをご提案することも多くなってきました。

上の写真は皆賀の家の洗濯室です。

ただし、これらを廊下でつなげてしまうとどんどん床面積が広くなっていってしまいます。

予算があれば良いとの考え方もありますが、床面積は建設コストだけではなく、

完成後の光熱費にも大きく影響を与えますので、できるだけ最短ルートで、

水回りを繋がていくことが、イニシャルもふくめたランニングコストに良い影響を与えます。

こうして、キッチン→家事室→洗面→浴室と廊下なしでつなげ、

運動部のお子さんがいらっしゃるご家庭であれば、玄関→シューズクロークと

洗面所の距離も気になるところです。

このようにそれぞれのゾーンを明確になれば、コンパクトな良いプランとなります。

また、大体のゾーニングが終われば、再び窓の位置を確認します。

リビングの窓は日射取得に有効ですが、南の隣家の視線が気になります。

植栽を植えれば、視線をカットできますし、隣家への借景のプレゼント、

また、角地なので、町並みにも寄与できそうです。

少し話が脱線しますが、

「隣の家の庭がとてもきれいで、このマンションの3階を買った」という人がいました。

しかし、数年後、豊かな庭があった住宅は建て替えられ、無機質なコンクリートの住宅となりました。

その方は、

「借景は借りるだけではなく、提供しないといけなかったんだ」と言われたそうです。

個人の住宅をつくる際、利己的に考え進めるのではなく、利他的に考えると

豊かな町づくりになっていくと、私は考えます。

西の借景がもらえるなら、恩返しに街へ借景をプレゼントする気持ちが大切です。

構造と屋根

ここからは一般の方には難しい内容ですが、

間取りには屋根や構造はとても重要です。

大まかな間取りが決まり、細かくな寸法を考えていくには、

建物の力の流れを考える事が重要です。

上の写真は柳井の家ですが、屋根から母屋、母屋から小屋束、小屋束から梁、梁から柱と

順番に力が流れてきます。

小屋束や柱などの重さを下へと力を流していく、材が1-2階で同じ位置にできるだけ

あることにより、大きな梁ではなくても、堅牢な構造体を作っていくことが可能になります。

逆に柱が1-2階揃っていないと、梁が大きなものとなり、構造体がどんどん高くなり、

耐震性や耐風性も不利になっていきます。

上の写真の赤い線はどこで、1-2階の柱・壁位置を揃えるかを意識するために

間取りの延長上で、記入していきます。

一般的にはこの赤い線が3640(2間)から、4550(2.5間)までにおさまることが、

木構造や基礎構造に無理がなく、経済的な設計ができます。

時々、1-2階で全く壁の位置がそろっていない住宅を見ることがあります。

現在、木造住宅は詳細な構造計算を法律で要求されていません。

ここで想像力を少し働かせていただければと思います。

各階間取りがバラバラというマンションはありません。

先程も書きましたが、力は水と同じように素直に上から下へと流れていきますので、

1-2階の壁の位置な全くバラバラというような家をつくることは60年以上住む住まいとしては、

決しておすすめできませんので、ご注意ください。

おまけ、住宅の高さ

窓と同じく、高い天井がよいという方が、たくさんいらっしゃいます。

もちろん、日射取得も考えれば、吹き抜けを利用して高い位置からの採光をとることもありますが、

家の軒は低いほうが望ましいです。

これは京都のとらや本店です。

軒が深いことで、半外空間が生まれます。

屋根が下がっていくことで、

街に柔らかな景観を作っていくことができます。

もちろん、軒が深いことは外壁を雨から守ってくれ、

その住まいを高耐久にしていきます。

室内の高さも240cmというのが標準のように家が作られていますが、

ソファなどに座る住宅の天井高さについて、考え直しても良いかと思います。

高耐久で高性能な家は、長く愛される街にあるからこそ、その本当の価値が発揮されます。

家づくりは町づくりであることを忘れずに、計画されてください。