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気密性の高い家の危ない現実。エネルギー専門家の警告!

お金に詳しい建築士の川端です。

私はファイナンシャルプランナー

でもありますが、

日本エネルギーパス協会の西日本講師

でもあります。

 

毎年、講師の仕事がありましたが、

コロナの影響により、今年はそういった機会は

なさそうです。

しかし、これを好機と捉え、

さまざまな発信を今年は行って行きたいと

考えています。

まず、高気密な住宅において、

さまざまな方が、

ブログで見解を示されていますが、

多くは換気が適切に行われるために、

必要な気密性能という観点で

掲載されていますが、

今回は別の視点、「エネルギー損失」について、

解説したいと思います。

気密性能の日本と国際規格の違い

まず、日本の気密測定の結果は

C値として評価され、

床面積1㎡あたり、

どれだけの隙間(cm2)があるかを

評価します。

 

その際の5点以上の気圧差でグラフを作成して、

隙間面積を算出します。

しかし、国際基準(ISO)では

気圧差50パスカルの場合の

気密性能を求められます。

 

50パスカルの気圧差は

風速25m程度の場合ですので、

日本の基準に比べて、

かなり厳しいと言えます。

風速と気密性能は

実はかなり密接な関係があります。

風が強く吹くと、

家の隙間から入ってくる隙間風の量は

もちろん増えます。

 

 

また、日本と海外で風の強さが

大きく違うというよりは、

地域差が高いといえます。

 

例えば、瀬戸内海と日本海側では

風速は日本海の方が強く、

島と内陸であれば、島の方が風が強く、

1階と5階であれば、

5階の方が強く風が吹きます。

そのため、国際規格ではより厳しい条件で、

気密測定をしているということです。

日本で高い気密性能を求める場合も、

建設地にそくした気圧での気密性能を

計測する必要があります。

隙間風による換気量

これは隙間風により、一時間あたりどれくらい

空気が入ってくるかの計算式です。

 

とても難しい式ですね。

今回はマニアックな方向けなので、

お好きな方だけお付き合いくださいね。

 

Vが建物の気積(体積)

n50というのが先ほどお話しした

50パスカルの気密性能。

eは周辺環境による数値で、

周囲に建物がない場合 0.10

建物はないが樹木が点在 0.07

森林や街なかに立つ場合 0.04

と設定されます。

つまり、廻りに風よけとなるような、

樹木や家があれば、

風が建物に与える影響は少なくなる

ということです。

fは建物に風よけとなる

ファサードがあるかどうかですが、

住宅ではあまり見かけませんが、

広島ではオタフクソースのウッドエッグが

わかりやすいかと思います。

こうしたファサードがあることにより、

風による漏気量の増加を抑えることができます。

 

 

例題として、

気積が300㎥、周辺に建物がない場合で、

n50が0.6h-1 (C値 0.2)

n50が7h-1(C値5.0)

の場合を計算してみます。

 

V1とV2は給気と排気ですので、

今回は第一種換気で、給気も排気も

同じとします。

 

そうすると、分母は1だけが残りますので、

分子だけの簡単な式となります。

 

C値0.2の場合

300×0.6×0.10=18㎥

 

C値5.0の場合

300×7×0.10=210㎥

 

となります。

この時点で、C値の違いで、

11倍ものフィルターを通さない空気が

室内に入っていることがわかります。

最近、密室・密着・密接の言葉により、

気密性能が高い住宅は感染しやすいと

SNSで流れているようですが、

フィルターを通さずに住宅内に

空気を入れる方が危険であることは

言うまでもありません。

手術室やクリーンルームを想像すれば、

理解が早いかと思います。

 

ちなみに一般的な換気扇の能力は

80㎥〜150㎥くらいなので、

気密性能が悪い建物は。

その2倍以上の隙間風は入ってくるため、

換気をするメリットは全くありません。

換気による熱損失

さて、本題の換気による熱損失です。

機械換気を気積の半分である150㎥/hとして、

85%の熱交換をしたとします。

その場合、15%の冷暖房をした空気を

外に捨てていることになるので、

150㎥×0.15=22.5㎥です。

 

外気温が0℃、室内が20℃の場合

漏気と機械換気の全排気量と

それによる熱損失は以下になります。

 

C値0.2の場合

22.5+18=40.5㎥

40.5×0.34×(20−0)=816.8Wh

 

C値5.0の場合

22.5+210=232.5㎥

232.5×0.34×(20−0)=1,581Wh

 

1580W!!!

このストーブを2台、家の外においているのと、

同じ話になります。

気密性能で失敗しないためのポイント

実務者もふくめて、

日本人は新しい機械や工法を

試すのが大好きな傾向があります。

しかし、そのすべての根本は

確かな知識と、堅実な現場の施工にあります。

 

どれだけ高性能な換気設備を入れたとことで、

C値の数字だけではなく、

その性能がもたらす、

ロジックを理解していないと、

的確な設備設計にはなりません。

 

たとえば、キッチンのレンジフードは

120㎥〜420㎥の排気能力があります。

先ほどの計算で、C値が0.2の場合、

15㎥の漏気しかありませんので、

レンジフードを回したときの給気を

しっかりと計画する必要があります。

 

日本では海外に比べ、

煮物、油ものを調理する機械が多いので、

気密ばかりに気を取られると、

レンジフードが排気せず、

料理をするたびに汚れる住まいになります。

 

気密性能に応じた設備設計は

重要なキーワードですので、

総合的な判断ができる人に

設計を依頼しましょう。