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耐震等級3に必要なお金とは? 一級建築士が解説!

「耐震等級」

という数年前では難しい言葉も、

長期優良住宅の普及や、

構造塾など民間団体の尽力により、

大分、一般の方にも

聞き馴染みのある言葉になりました。

 

 

いまだに木造建築は柔らかく、

靭性があるものが地震に強いと

主張する団体がありますが、

 

その柔らかく靭性が高い建築の

象徴である神社も

地震で簡単に壊れてしまします。

 

スカイツリーのような特殊建築ではない

個人住宅はやはり、

ある程度、

構造を硬くすることが、

長く安心して暮らす事が

可能になります。

三匹のこぶたが作る家も

狼の息に耐えたのは重く硬い

煉瓦の家でした。

しかし、日本の家は

木造が主流です。

 

硬くするにはコストがかかります。

その費用について解説していきます。

 

耐震等級3の基礎

まず、木造住宅の現状として、

もともと基礎がない家が作られてきました。

風を通し、耐久性を重視したのですが、

不同沈下や地震に弱いということは

あきらかで、

基礎工事が戦後にようやく

普及しました。

 

上記写真は私が検査に行った

ローコスト住宅の基礎です。

全く違法性もない基礎ですが、

赤い丸の部分は

床下を点検するための基礎開口です。

 

ここが住宅基礎の問題点です。

 

上記は鉄筋コンクリートの構造ですが、

梁は上の床や屋根を支えています。

住宅の基礎も上下逆転していますが、

地震時には地面から流れてくる力を支えるために

基礎の立ち上がりは重要です。

 

一般的に作られる木造基礎は

構造計算がされていないため、

基礎の開口部の補強がされていません。

 

上記はプレゼントデザインが設計した

住宅の基礎開口部の補強です。

ローコスト住宅のものと、

鉄筋の多さの違いが、

プロでなくてもわかるはずです。

 

基礎工事の性能による

費用アップ分はほとんどが

この鉄筋量の違いです。

 

価格差は5千円/㎡ほど。

 

基礎は1階の面積に比例するので、

1階が20坪 66㎡の場合、

33万円の増額になります。

 

この増額を高いと思うか、

ローコスト住宅の基礎が

安すぎると思うかは、

あなた次第ですが、

基礎を後から補強することは

かなり困難である

ことをお忘れなく。

 

耐震等級3の構造躯体

耐震等級3の構造躯体−1 耐力壁

耐力壁は筋交いと

構造用合板などの面材に分かれます。

この筋交は木材ですので、

高価なものではありません。

 

コストを抑えた住宅では、

この筋交いだけで構造検討を

行う場合も多く見られます。

 

構造用合板、ダイライト、モイスなどは

筋交いに比べ材料費も高く、

大工が施工する手間も増え高価になります。

その価格差は筋交いだけに比べると

40坪の家で25万円ほど。

外壁を面材で構造を構成することは、

気密性能を上げることにも繋がります。

別途結露の問題もありますが、

気密と防湿に関しては、

別の機会に解説したいと思います。

 

耐震等級3の構造躯体−2 水平耐力

強い建物を作る時にイメージしやすいのは

ダンボールです。

同じ立体物ですからね。

 

上記写真のようにダンボールの

蓋が空いた状態の場合、

ダンボールを横から力を加えると

ひし形に変形してしまいます。

 

ダンボールをしっかりガムテームで

蓋を閉じると、しっかりとして、

箱がひずまなくなります。

 

この蓋が水平耐力です。

 

木造住宅の場合、

この水平耐力を火打材と呼ばれる

斜め材で構成します。

梁材の直角を保つようにしているわけです。

 

しかし、プランによっては

この火打だけではフレームが

長方形を保てなくなります。

 

その条件が吹き抜けや

大空間がある場合です。

 

いくら耐震等級3であっても、

魅力のない空間であれば、

意味がないですよね。

 

魅力ある空間で、

耐震等級3をクリアするために

登梁や小屋梁に構造用合板を貼ります。

これがダンボールの蓋のようになり、

地震力や台風の横風がかかっても、

立方体を崩さないようになります。

その費用は20万円〜40万円

登梁にするかどうかにより費用が変わります。

 

耐震等級3の構造躯体−3 梁せい

続いて梁せいです。

「せい」は背のこと。

「梁」は水平にある構造材。

梁は上からの力を下に伝える

役割を持っています。

 

上の写真も屋根の重さを

梁が支えています。

 

ちょっとマニアックな話ですが、

梁の幅がb、梁のせい(高さ)がhといい、

上記の断面二次モーメントは

梁の変形しにくさを表しています。

h(梁の高さ)が3乗になっているので、

高さが梁の変形しにくさに影響します。

 

難しいですね。

ごめんなさい。笑

定規を想像してください。

定規を平たい方向に曲げると

簡単に曲がりますが、

縦の方向に曲げると曲がりません。

このようにそれぞれの梁が

請け負っている力に対して、

梁の高さを計算することが

耐震等級3には必須です。

 

逆にいうと

耐震等級を取得していない

建物はこの計算を

行っていません!!

 

ちなみに、構造計算を行った

構造材の費用の40坪で20万円ほど。

 

構造計算を行わずに

20万円安くしたい人が、

いらっしゃるかはわかりませんが、

多くの住宅では

この計算は行われていません。

 

その理由は、

木造の実務者には

難しすぎて、

外注する設計費など、

消費者の負担が

増えるかという理由です。

 

では次にその設計費を解説します。

耐震等級3の設計費

基本的に行政が指摘するように

工務店が自社で構造計算をしている会社は

極少数です。

 

試しに下記ワードで検索してみてください。

「木造 構造計算代行」

たくさんのサイトがでてきます。

 

多くの工務店がこれらのサービスを

利用して、お客様からの要望があれば、

耐震等級を取得するわけです。

 

その費用は15万円ほど。

 

工務店によっては

自社の手間も踏まえ、

上乗せされ、25万円ほど。

 

安くないですよね。

ですが、プレゼントデザインの場合、

工務店からの依頼は40万円いただきます。

 

理由としては

プランが確定した後の

構造計算はかなり難しいからです。

 

構造計画は本来、

間取りの計画と同時に

行うものなのです。

上記はプレゼントデザインが設計している

光が丘の計画段階の検討写真です。

左が意匠デザイン、右が構造計画です。

 

このようにプランと同時に

構造検討しないと

 

あとから、

ここに柱が必要とか、

ここには窓がつけれない、

などなど、

プランが決まったあとで、

調整しないといけません。

 

自社で構造計算をしていない場合、

外注の設計事務所の検討で、

プランが変更になる可能性があります。

 

どうですか?

プランが固まったあとに、

耐震等級3を取得するために

変更が要求されたら、

納得できますか?

 

経験上、

工務店から依頼の場合、

上記の調整に

かなり時間がかかります。

 

耐震等級3を工務店に求める場合、

誰が構造設計を行うのか、

予め確認しておくほうが、

後々、トラブル回避できます。

 

耐震等級3にかかる費用 まとめ

さて、全く構造計算していない40坪の家を

耐震等級3を取得するための

費用をまとめておきます。

1.基礎工事 33万円

2.耐力壁 25万円

3.水平耐力 20万円(プランにより不要)

4.構造材 20万円

5.設計費 25万円

合計 123万円です。

 

あくまでも40坪の

概算の試算ではありますが、

120万円は高いでしょうか?

 

40年、50年、60年と

安心して暮らすために

ぜひ、賢い選択をしてください。

 

なお、耐震等級3にすれば

地震保険の割引を受けれますので、

詳しくは下記ブログを読んでみてください。

耐震性能のウソの解説ブログ

 

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耐震等級3の住宅を知られたい方は

まずは下記動画を見てください。