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良い住まいづくりは敷地の読み取りから

Pleasant Designはホームページ上にも記載しているとおり、
「パッシブデザイン」を得意とする設計事務所です。

パッシブデザインは現在省エネ建築ブームに引っ張られ、
様々な流派ができていますが、新しい技法ではありません。

まずは敷地の読み取りから行います。
「読み取る」のは太陽の動き、風の動き、周辺の建物及び樹木です。

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南東

最近ではこのようにスマートフォンで太陽高度を確認できるアプリや
3DCADにより、建設地の緯度経度から隣家が及ぼす影の影響もシミュレーションが可能になっている。

私は「パッシブデザイン」の一番重要な要素は窓の設計だと考えている。
夏の太陽をどのように遮り、冬の太陽をどのように取り込むかが家の快適性を決定付ける。

太陽に関しては決まった軌道を描くので、シミュレーションするのはそんなに難しくない。
もう一つのパッシブデザインの要素、「風」をみてみよう。

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これは広島市の風配図です。
自立循環型住宅のサイトからダウンロードできるこの図は、
パッシブデザインを勉強したことがある人は馴染みがあるかもしれない。
これを見ると広島市の夏は昼間は南から、夜は北から風が吹く。
太平洋沿岸部ではこの傾向は強い。
しかし、私の経験的にこれを鵜呑みにするのはよくない。

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広島には「夕凪」という言葉があり、
夕方無風になる時間帯がある。また町中の住宅地では夜間も風を感じることが少ない。
これは街の形状が影響と与えている。
デルタ形成された広島の街は上記写真のように三角形で形成されており、
南からの風が三角形の頂点に集まるようになっている。
その頂点にはJR線がある。広島のJR沿線は土手で作られており、
山からの冷たい空気は重く土手で止まることにより、無風の夕凪が起こる。

現にJR沿線の北側にある白島のマンションにすむ友人は夏はエアコンをつけたことがないと話す。
土手の高さ以上のこの三角形の頂点にある地域は通風良好で、日中に暖められた
コンクリート躯体を十分冷やしてくれるのであろう。(おそらく冬はかなり寒いと推測される)

また、右側の矢印は瀬野川を示しているが、瀬野付近は南からではなく、西から風が吹く。
このように風を読むのは簡単ではなく、街と自然を読むことに近い。

加えてこちら
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これは真夏の新幹線ホーム
俗にいうヒートアイランドである。
基本的に通風は室内より低い温度を空気を取り込み事で行う。
このような熱気を取り込むのは逆効果で、残念ながら都市部では通風による
建物の冷却が期待できる時期は限られている。
郊外であっても敷地をコンクリートで固めてしまうと都市部と同じ結果となるので、
通風によるパッシブデザインを考えるには外構計画も重要となる。

ただ、ヒートアイランドを別として、
通風をいつまで期待できるのか、ずっと自問自答を行っている。
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私はマスクが苦手だが、年中マスクをしている日本人。
欧米ではこんな状況を見たことがない。
これほど、ウイルス・花粉・PM2.5に敏感な日本人が、住まいの通風にこだわっている。

空気汚染が改善されることを期待しつつ、通風計画を行い
加えて窓から直接新鮮な空気を入れることが困難になる最悪なシナリオを見据え
24時間換気による空気清浄を組み込む必要があると私は考えます。