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付加断熱にすれば、三種換気でもよいか? ライフサイクルコストを徹底比較!

ダクト式換気扇って聞くと

どんなイメージがありますか?

 

上の写真のよう大きな配管を

イメージされる方も多いかもしれません。

実際にヨーロッパでは

このような太い配管が使われていますが、

日本では上記のように

もう少し細い配管が主流で

ダクト式24時間換気扇が使われています。

 

細いといっても、

心配なのが配管の中の

ホコリやゴミ

ですよね。

 

実際にいろんなホームページで、

ダクト式配管は不衛生!!

と書かれています。

 

ここは実は大きな誤解があります。

まずは何が誤解か確認しておきましょう。

 

ダクト式換気の世間の誤解

ダクト式換気の誤解① 配管が細いからゴミが詰まる

配管は残念ながら人が入れるような

大きさではないため、

見えないからこそ、

嫌悪感が強い

と思います。

 

流れがあるということでいえば、

運ぶものが空気と水と違いはあれど、

川と同じです。

 

狭い川のほうが詰まりやすく、

広い川のほうが流れやすくなります。

 

上記は配管の模式図ですが、

一番左が、ヨーロッパでよく採用される

100mmの太さの配管。

 

中央は日本でよく流通されている

50mmの配管です。

 

どうでしょうか?

確かに50mmの配管は

詰まりそうだと私も思います。

 

ようするに

ダクト式配管全部がダメではなく、

細い配管があまりよくない

ということです。

 

なぜ、日本では50mmの配管を使うのか?

それは在来軸組工法だからです。

 

在来軸組工法は梁という構造材で

床を支えているので、

ヨーロッパの主流のツーバイフォーよりも、

配管を通すスペースが小さくなります。

 

よって、持ち回りのしやすい

50mmの配管が実務者に好まれているのです。

 

プレゼントデザインでは上記の模式図のように

間の75mmの配管を基本的に使っています。

100mmの配管だとどんどん家の高さが高くなるので、

デザインと機能のバランスを取っています。

 

配管が太く、流れを阻害するような

曲がりが少なければ、

ゴミが配管内にたまることは

あまり心配することはないと考えています。

 

ダクト式換気の誤解② 第三種換気扇も掃除が必要!

第三種換気扇はトイレなどの

汚れた空気が出るところに換気扇を設置し、

新鮮な空気が必要なリビングや寝室に給気口を

設置する方式をいいます。

換気システムの詳しい解説はこちら

 

目に見える位置に換気扇があるから

とても安心感がありますね。

 

ここで注意事項。

ゴミやホコリというのは

基本的には家の外から入ってきます。

 

つまり、

給気口にフィルターがつきます。

 

気づかない人も多いのですが、

給気口の蓋を外すと、

フィルターがあります。

 

もちろん、フィルターですので

定期的に掃除が必要です。

 

もし掃除をしないと、

先程も書いた通り、

給気口があるのは

リビングや寝室、子供部屋です。

 

しかも給気口の数は

リビング、寝室、子供部屋×2であれば、

4箇所です!(和室があれば5箇所)

 

ちなみにダクト式第一種換気の場合、

フィルターは1箇所で2枚。

 

つまり、第三種換気のほうが

お掃除は大変ということになります。

 

最近ではサイクロン式給気フードなども

販売されていますので、

 

第三種換気よりもダクト式第一種のほうが、

不衛生になるというのは

かなり偏った意見であると言えます。

 

とはいえ、コストも気になりますよね。

そこはファイナンシャルプランナー建築士の川端。

次にしっかりと解説いたします。

 

付加断熱のメリットは第三種換気デメリットを上回るのか?

実は今回のブログは実際に設計中の

お客様からのご相談の実話です。

 

前述のようにダクト式換気システムに

抵抗感があったわけですが、

汚れのリスクは第三種換気にも同様にリスクが

あることをご説明しました。

 

でも最近のお客様はなかなかの

勉強家が多く、

次のご質問が

 

「第三種換気は初期コストが安く、

冷暖房負荷が高くなる。

ダクト式熱交換換気は初期コストが高く、

冷暖房は安くなる

では付加断熱をすれば、第三種換気のデメリットは

なくなるのではないのか?

付加断熱なし+熱交換換気と

付加断熱+第三種換気の

どちらがライフサイクルコストが良いのか?」

 

本当に勉強家です。苦笑

でも私もかなり興味があったので、

喜んでシミュレーションしてみました。

熱交換換気、第三種換気、付加断熱のライフサイクルコスト

プレゼントデザインではG2つまり付加断熱なしに

熱交換ダクト式換気を標準にしているのですが、

この計画の場合、

30年間での換気、断熱強化費、冷暖房・換気の光熱費の

合計での比較は

なんと第三種換気が一番高くなります。

 

今回は寒いのが苦手ということで、

シミュレーションの気候データを

広島市北部に設定しているのも影響していますが、

第三種換気のほうが高い

というのはなかなか興味深い結果となりました。

ある意味プレゼントデザインの標準である

付加断熱なし+熱交換換気がバランスが取れていると思います。

 

でもお金だけではなく、

室温も大事ですよね。

もちろん、シミュレーションしています。

 

熱交換、第三種、付加断熱の室温シミュレーション

今回のシミュレーションの計画は

LDKと寝室にエアコンが1台づつというケースです。

床下エアコンた小屋裏エアコンではなく、

個別エアコンというスタイルになります。

 

お子様がまだ小さく、

子供部屋にエアコンがない状況で、

どのように室温が変化するか

シミュレーションしました。

 

リビングと主寝室のエアコンは

夏冬とも常時運転している設定です。

 

お客様のご希望で冬の暖房運転は

23℃でシミュレーションしましたが、

当然ですがどの条件でも

リビングは23℃になります。

 

しかし熱源のない子供部屋は

付加断熱なしの場合、18.3℃

エアコンの運転を23℃にしているので、

温度差が5℃近くあります。

 

体感温度の難しいところなのですが、

リビングが23℃であれば、

18.3℃は寒いと感じることになります。

 

やはり子供部屋にも

エアコンが将来必要になるかもしれませんね。

つまり暖房費が増えることになります。

 

一方、付加断熱をして

熱交換換気を利用した場合、

子供部屋は19.6℃まで上昇し、

これも体感温度によりますが、

子供部屋にエアコンをつけなくても

衣類で調整できるかもしれません。

 

その環境が30年のライフサイクルコストの差が

17万円程度で実現できるのは意味があることと言えます。

 

第三種換気は問題外ですね。

一番ライフサイクルコストが高く、

子供部屋の室温が下がるので、

(外気を直接入れるので当然)

子供部屋のエアコンは不可避となります。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

はい、わかってますよ。

気になりますよね。

子供部屋の夏の室温

 

これは温暖地エリアでの

私達実務者の課題といえます。

 

次にちゃんと解説します。

 

夏の2階個室の暑さ回避方法

私も双子の父ですので、

子供には快適な環境で勉強してほしいと

思います。

(勉強しているかは定かではありませんが。。)

 

1階にLDKがあって、

2階に子供部屋、寝室がある場合は

一台のエアコンで建物全体を冷やすことは

かなり難しいです。

 

できないことはありません。

それは2階をオープンにつくることです。

そうすれば1台のエアコンで建物全体を

冷やすことは可能です。

 

その場合、乗り越えないといけないのは

プライバシーの問題。

 

オープンな間取りということは

部屋間の音の問題が出ますので、

プライバシーを保つことは難しくなります。

 

だから、ヨーロッパでは

配管サイズの大きい第一種換気システムを

採用して、プライバシーを保ちながら、

温度差がでないようにしています。

 

日本人はこうしたプライバシーの

問題には鈍感な方が多いですので、

仕方ないと諦めるところでもありますが、

 

暮らしの工夫ということもあります。

 

上記のように2階のすべての扉を開放して暮らした場合、

当然ですが、子供の室温も下がります。

しかも、冬はリビングのエアコンのみ、

夏は寝室のエアコンのみの運転で、

この環境になります。

 

でも、扉を開けていたら、

プライバシーが保てないのでは?

 

そのとおりですね。

ただ、そこも暮らしの工夫ができそうです。

 

夏は家の中が暑くなる原因は

日中の日差しが一番大きな影響があります。

 

つまり、家族が学校、仕事に行っている昼間は

扉を開放して、家全体を冷やす。

 

そして夜帰ってきたら、

日差しはもうないので、

扉を閉めて、

プライバシーを守るということが可能になります。

 

逆に冬は夜冷え込むので、

受験勉強時期のみ、

電気ストーブなどの補助暖房を

付けてもよいかと思います。

 

残念ながら、

私の持っているソフトでのシミュレーションは

昼夜開け締めするということはできないので、

上の室温はずっと開いている前提になります。

昼間だけの場合はもう少し、

室温は変化すると思います。

 

ちなみに開放して、エアコンを1台で

冷暖房するほうが一番光熱費は安くなります。

 

最終的にお客様はG3+熱交換換気を

選択されました!

 

今までは冷暖房の効きが悪くなるので、

「寒いから扉閉めて!!」

と教育していたかもしれませんが、

 

高性能住宅の基本は

「寒い(暑い)部屋ができるから、

 扉開けておいて!!」

と教育方針を変えて頂く必要がありそうです。

 

付加断熱と換気方法の関係まとめ

今回のブログのまとめです。

1.ダクト式換気扇は配管の太さが大事

2.第三種換気のほうが掃除は大変かも

3.第三種はライフサイクルコストは意外に高い

4.夏の2階の個室対策はできれば開放

 

一番の課題は開放した間取りです。

実務者によっては、

高性能住宅は開放した間取りで暮らすべし!

と言われる方もいらっしゃいます。

 

ただ、そう思い通りに行かないのが家族だと思います。

扉は締めときたいというご家族もいらっしゃると思います。

 

その場合は個別エアコンを選択するのも

私は間違っていないと思います。

 

または、過去に空調室という

計画をしたこともあります。

 

扉を閉めながら、各部屋の温度を

均一にされたい方は、

下記ブログ下部に考え方をご案内していますので、

ご興味があれば、読んでみてください。

 

話題の床下エアコン、大丈夫?