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○○工法より大切なこと。

私の前職でこんなことがありました。
「川端くん、この家 冬は暖かいけど、夏は暑いんよね。」

そのころ、全国的に外断熱工法が大ブームになっており、
外断熱VS内断熱みたいな議論が行われていました。

当時は外断熱工法のフランチャイズに入っており、それを取り入れるだけで、
お客様の負担コストが増えるのですが、
みんなそれでいい家ができると信じて、家づくりを行っていました。

次は会社が北海道型住宅を推進する団体の勉強会を導入し、
「あなた達は断熱が詳しくないから、私達と同じ家造りをすればいい」
と結構カチンとくる言われ方をしました。

今、思い返せば、その人は正しかったと思っています。
結局外断熱工法であろうが、内断熱工法であろうが、
必要な断熱材の厚みがないと、夏暑くなったりするわけです。

ちょっと難しい話ですが、Q値やUa値などの熱損失係数は
家全体の熱損失を床面積や外皮面積で割っている値のため、
窓の性能がよければ、屋根の断熱材の厚みが薄くても基準をクリアすることになります。

私は普段、いろんな会社の温熱計算をする機会がありますが、
広島では特に屋根の断熱材の薄い家が多く見受けられます。
屋根面の断熱材の薄さが広島の夏の暑さに耐え難く、
冬の足元の冷やす、不快な家の原因となっています。

こういった考えに行き着いたのは
「広島には広島の家づくりがある」
と教えていただいた、私の温熱の師匠 野池さんです。
野池さんとの出会いが私の現在を作っています。

その話はまた後日として、先月ホームページからの問い合わせで、
以下の相談がありました。

「◯◯という工法に興味があり、それを使うことのメリット・デメリットを教えてほしい」

この工法は屋根面に集熱パネルを設置し、家の中に暖気を送るという工法で、
パッシブ的には暖房をエネルギーを使わずできるので、すばらしいものであると私も考えています。
一度使ってみたいくらいですが・・・
後日現地を見に行って、日照シミュレーションをした結果が以下です。

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東側に4階建ての建物があり、午前中の日射は得られません。
これでは屋根面の集熱などほぼ期待はできません。
一般消費者はこのあたりが気づかなくてももちろん仕方ないですが、
時々、実務者も同様に工法に溺れてる人を見かけます。

心地良い家造りの原点は敷地を読むことです。
地域性を考慮しない家づくりはとても危険です。

ここから、またマニアックに行きます。
NEDOのホームページに行くと地域ごとの日射量を知ることができます。
まずは屋根集熱暖房のお膝元静岡県
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1月の南壁面の日射量は4.20kWh/㎡

 

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続いて、広島市は
1月の南壁面の日射量は3.15kWh/㎡(静岡の75%)

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続いて、三次市は
1月の南壁面の日射量は2.00kWh/㎡(静岡の47%、広島の63%)

 

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続いて、島根県松江は
1月の南壁面の日射量は1.59kWh/㎡(静岡の38%、広島の50%)

どうでしょう?
さすがは緯度を縦断する列島日本です。

浜松に友人の工務店さんたちがいますが、
彼らはQ値1.9 G1を標準で家造りをしています。
敷地も平坦で面積も大きく、屋根集熱ではなく、
南ガラス面からたくさんの日射をいれ、それで十分暖かくなる。
彼らはあまり外皮性能をあげすぎるとオーバーヒートを起こすことを知っています。

ですが、広島市ですら、浜松の日射量の75%です。(1月の比較)
そして、三次市は半分以下、山陰にいくと40%を切る。

中国エリアが決して暖かくないことをご理解いただけたでしょうか?
ですが、夏も暑い。
私は少し前までは、静岡と同様にオーバーヒートを考慮して、
G1レベルを推奨してきましたが、今はG2以上を目指します。
それは設計者として、夏の日射遮蔽対策を行い、
建物性能を上げることができると私は考えるからです。

これは○○工法などに考えを委ねるだけではなく、
様々な温熱設計で行った経験により、そういった技術が私に身についたからです。

先にも書きましたが、世の中ある工法は私よりも優秀な方が開発したものですし、
中にはその工法をブラッシュアップして、オリジナル以上の性能で家づくりをされている方もいらっしゃいます。
そういった方たちはかならず、敷地条件を丁寧に読み取る人たちです。

ある意味、工法だけを信じてしまうと、ハウスメーカーのようにオリジナリティがなく、
地域性を無視した家づくりになりがちです。

ぜひ、信頼できる地域の作り手と巡りあってください。